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No Boundaries / Undo, Redo

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  • 4月5日
  • 読了時間: 7分

今回ご紹介するのは、中之島にあります国立国際美術館で現在開催中の、「No Boundaries」と「Undo, Redo わたしは解く、やり直す」です。

両展覧会ともに、2025/6/1(日)まで開催中です。


国立国際美術館といえば、国内外の現代美術を牽引する完全地下型美術館です。

マレーシアのペトロナスツインタワーやあべのハルカス・麻布台ヒルズを設計したシーザー・ペリによる建築物ですね。

とても素敵な外観をしており、ガラス天井から地下エントランスへの光の導きが、地下空間ながら開放感を創出しています。

現代美術に限らず、新聞社主催の歴史的展覧会なども開催されており、多様な企画展を楽しめます。


そんな国立国際美術館で、現在開催されている展覧会に参戦。

暁のお気に入りをご紹介していきます。


まずは一つ目の展覧会、No Boudaries。エスカレーターを最後まで降りた、地下3階の展示室から観覧していきます。


No Boundaries 入り口
No Boundaries 入り口

私たちの社会には、さまざまなバウンダリー(境界)が存在します。国境や土地の境界など物理的なものから、心理的、社会的、文化的なものまで多岐に渡り、私たちの行動、思考、価値観を形成する輪郭になります。本展覧会では、国立国際美術館が所蔵する21名の国内外で活躍する現代美術作家による作品を通して、現代社会におけるさまざまな「境界」をテーマに、私たちの日常や価値観がいかに形成されているのかを可視化するとともに、私たちが「境界」と呼ぶ既存の枠組みを解体し、新たな視座の提示を試みます。

現在のグローバル化時代における「越境」の本質を抉る展覧会ですね。

この地下3階という、物理的に「深層」に位置する展示室にエスカレーターで下っていくと、無意識のうちに「日常の境界」から離脱するんですよ。そうなんです。この空間設計そのものがメタファーになっているのです。


そして、入り口にあるご挨拶の文章を読み、まず第一作目が、森村泰昌の「肖像/ゴッホ」です。


1985年 森村泰昌 肖像/ゴッホ
1985年 森村泰昌 肖像/ゴッホ

森村泰昌さんは、暁と同じく大阪生まれの画家さんです。

1985年に初めて、セルフポートレイトの作品「肖像/ゴッホ」を発表し、それ以降、「わたし」という一貫したテーマを持ち、様々な題材で「なにものかに扮するセルフポートレイト写真」を発表し続けています。

発色現像方式印画の特性を活かした質感は、ゴッホの油彩が持つマチエールを写真媒体で再構築しており、特に注目すべきは、耳の包帯に使用された布の質感表現です。ポーラ美術館所蔵版(136×121cm)のサイズが示すように、鑑賞者を現実と幻想の境界に立たせるスケール感覚は、単なる写真複製を超えた「絵画的実在感」を生み出します。



次に紹介したいのが、やなぎみわのマイグランドマザーズシリーズです。

今回は、YUKAとAIの2作品が展示されています。


2000年 やなぎみわ My Grandmothers:YUKA
2000年 やなぎみわ My Grandmothers:YUKA

2000年から始まったこのシリーズは、若い女性モデルに「50年後の自分」を想像させ、特殊メイクと写真技術で可視化する実験的な試みです。モデルとの対話を通じて未来の自己像を構築するプロセスそのものが作品の本質となっています。

モデルとなった女性たちが50年後の自分と対話するプロセスこそが、作品の真の核心ではないかと考えています。鑑賞者は、過去(制作年)・現在(鑑賞時)・未来(描かれた老女像)という三重の時間層を同時に体験することになるのではないでしょうか。


個人的にはとても好きな作品です。サイドカーに乗る赤髪の老女のとびっきりの笑顔が素敵ですね。どこかのドラとアメリカ横断、石油発掘なんて最高のフレーズです。

余談ですが、この写真の男女は撮影後結婚し、現在はお子さんもいらっしゃるらしいです。

すごいですね。現在の若さと未来の老いが1枚の写真に共存する時間的パラドックスです。

もう一枚のAIという作品は、占い師が子供たちを占いながら、ただ一人の後継者を待っているお話。

待つまでの間に、「あと何人の退屈な人生を語らなくてはならないのか。この子たちの未来のつまらないこと。」というフレーズがお気に入りです。

夢いっぱいの子供達の未来を退屈な人生と言ってのける、「老いの美学」ですね。

本シリーズは老いの多様性が見て取れます。とても心に残る作品でした。



次はこちらの作品。ヴォルフガング・ティルマンスの「シルバー143」です。

2013年 ヴォルフガング・ティルマンス シルバー143
2013年 ヴォルフガング・ティルマンス シルバー143

《シルバー143》が提示するのは、デジタル画像が支配する現代における「写真の原初的衝動」の再発見です。薬品の染みが生む不規則な模様は、ゲルハルト・リヒターの抽象絵画を連想させますが、根本的な違いは「光の物理的痕跡」という写真固有の特性を保持している点です。この作品は、写真が単なる記録媒体を超えて「時間を物質化する技術」たり得る可能性を示唆しているように思います。


この作品を取り上げたのは、全くもって作品とは関係ないのですが、パッと見た時に、大原美術館のルチオ・フォンタナの作品「空間概念 期待」を思い出したからです。真っ赤な背景に、切れ目が3本入った作品ですね。この印象的な真っ赤な作品がそれを彷彿とさせます。「空間概念 期待」では切れ目の一つ一つが期待を表現しているので、今回のヴォルフガングの「シルバー143」は、さながら期待のない作品となります。笑(冗談です。)



それでは、次の展覧会、エスカレーターを上って、地下2階の展示室にあります「Undo, Redo わたしは解く、やり直す」のご紹介です。


Undo, Redo わたしは解く、やり直す 入り口
Undo, Redo わたしは解く、やり直す 入り口

本展が提示する最大のパラドックスは、「解く行為」が「新たな縛り」を生む創造的サイクルではないでしょうか。例えば塩田千春の糸のインスタレーションは、ほどかれた記憶が新たなネットワークを構築するプロセスそのものを表現しているように思います。


ということで、まずは1作品目の紹介は、塩田千春の「トラウマ/日常」です。


2008年 塩田千春 トラウマ/日常
2008年 塩田千春 トラウマ/日常

塩田千春の《トラウマ/日常》(2008年作)は、私的な記憶と社会的な生の交差点を糸の物理性で可視化した挑戦的なインスタレーションです。純白の衣服や靴を黒い糸で宙づりにするこの作品は、一見すると詩的な美しさをまといますが、その本質は「傷痕の美学」にあるのではないでしょうか。

無数の黒い糸は、血管や神経線維のメタファーとして機能しながら、同時に「縛り付ける暴力」と「包み込む優しさ」の二重性を表現しています。ケンジタキギャラリーでの展示では、子供靴が地面から浮遊する不気味な浮遊感が、戦争や災害のトラウマを想起させる、この「軽やかな重さ」こそが、塩田作品の核心的な矛盾美と言えます。


この作品は会場の中でも異彩を放つ作品でしたね。存在感もあって、なんとも言えない佇まいでした。このワンピースや靴のみの演出は、特定の人物の不在を示しているみたいですね。ぜひ一度現物を見てみてください。



次の作品は、やはりこちらも目立っていました、草間彌生の作品「銀色の希死」です。


1976年 草間彌生 銀色の希死
1976年 草間彌生 銀色の希死

かの有名なアーティスト、草間彌生さんの作品が展示されておりました。

「銀色の希死」これまたインパクトのある作品ですね。

柔らかい布素材で硬質な死のイメージを表現しているようでして、無機質な銀色が生む冷たさと、鏡面効果による光の増幅という色彩戦略をとっています。

中央の棺型オブジェを囲む突起物群が「葬列」を連想させています。


制作の背景には、草間彌生氏の恋人・父親の死と自身の心身の不調があったみたいです。

戦後日本社会のタブー(性と死)への挑戦もみられますね。


次の紹介作品は、横尾忠則の「De Chirico misses Bocklin and Netzsche」です。


2014年 横尾忠則 De Chirico misses Bocklin and Netzsche
2014年 横尾忠則 De Chirico misses Bocklin and Netzsche

横尾さんが挑んだのは、デ・キリコの形而上絵画を「日本的なまなざし」で再解釈する行為そのものです。画面に散りばめられたイタリア広場のモチーフは、ボックリンの《死の島》とニーチェの『ツァラトゥストラ』を媒介に、記憶の迷宮へと変容します。特に注目すべきは、遠近法の歪みが生む「時間の褶曲」です。デ・キリコが描いた古典的建築物の影が、横尾の手によって漫画的なスピード線へと解体される過程に、東西美学の衝突と融合を見るのでないでしょうか。


横尾忠則さんは日本の有名な美術家で、美術館もありますよね。

87歳をこえた今も、毎日アトリエに自転車で通い、新作を発表し続けているそうな。

2023年に文化功労者にも選出されているみたいです。

デ・キリコの一ファンとしては、横尾さんとのコラボレーションが見れて嬉しい限りです。




謎の展示部屋
謎の展示部屋

こちらは途中にある謎の?展示部屋です。

何の部屋だったか失念。。

ただ素敵な絵の画像が流れていて、椅子が置いてあったので、途中休憩にとても良いかと。



紹介は以上です。

今回紹介していない作品の中にも素敵な作品が色々とありました。

とてもインパクトのある作品も。

ぜひ皆様、観に行ってみてはいかがでしょうか?


【展覧会情報】

・No Boundaries

2025/2/22(土)-2025/6/1(日)

・Undo, Redo わたしは解く、やり直す

開催期間:2025/2/15(土)-2025/6/1(日)

月曜日休館日

10:00 – 17:00、金曜・土曜は20:00まで

※入場は閉館の30分前まで

場所:国立国際美術館(〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-2-55)

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