パウル・クレー 創造をめぐる星座
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- 5月18日
- 読了時間: 7分
今回は、現在兵庫県立美術館で開催中の「パウル・クレー展 想像をめぐる星座」についてです。こちらの展覧会は2025/5/25(日)まで開催しています。
もう少しで終わってしまいますね。
こちらの展覧会、前期展示と後期展示があったのですが、暁は、後期展示にしか行けずでして。。。今回後期展示について話したいと思います。
まずは、開催先の兵庫県立美術館について、兵庫県立美術館と言えば、神戸市中央区のHAT神戸に位置する、兵庫県を代表する公立美術館ですね。2002年に開館し、阪神淡路大震災からの「文化の復興」と新しい街づくりの核として設立されました。愛称は「芸術の館」です。
建築は世界的建築家・安藤忠雄による設計で、コンクリート打ちっぱなしの幾何学的な構造と、海に面した開放的なロケーションが特徴です。館内は自然光を取り入れた展示室や、海を望むテラス、螺旋階段など多様な空間体験が楽しめます。
展示内容は、兵庫県ゆかりの作家(小磯良平、金山平三など)の作品を中心に、国内外の近現代美術も幅広く紹介しています。また、特別展や企画展も積極的に開催されており、年間90万人もの来館者を迎えています。
2019年には「Ando Gallery」も増設され、安藤忠雄の建築模型や震災復興の記録展示も行われています。正面の入り口から見上げるとカエルさんが見えますよね。愛称は「美かえる」というらしいです。


早速本題の、パウル・クレー展についてですが、、今回5/18(日)に訪問し、15:30から開催の学芸員の解説というものを聞いてきました。今回想定している人数よりも大幅に来場者がいたこともあり、開催会場がさらに広くなり、80名のところ150名まで入れるようになりました。暁の整理番号は143ということでなんとかギリギリ入れました。
今回の学芸員さんの解説は白熱いたしまして、16:15までのところ16:35まで話しておりました。
そんな学芸員さんのお話で印象に残ったところをお話しします。
まず、パウル・クレーですが、生まれはベルンで、父は音楽教師、母は歌手と絵ではなくとても音楽に慣れ親しみがあるんですね。当の本人はヴァイオリンがとてもお上手みたいで、その他詩なども制作し、若い時は、音楽家、文学家、画家の間で揺れ動いていたみたいです。
また、パウル・クレーは天地を反転させて描くなど、とても珍しい一面があります。
特に風刺画を好んで描いており、序盤に「喜劇役者」という風刺画が飾られているんですね。

こちらの絵、深刻な役者の顔と、グロテスクな仮面との二面性が際立つ作品です。
パウル・クレーは喜劇役者はお気に入りの題材で、同テーマで絵を何枚か描いているみたいです。
パウル・クレーは日記に、喜劇役者について、「《喜劇役者》については、仮面は芸術を意味し、その裏には人間が隠れているといえる。仮面の線は、芸術作品の分析への道筋である。芸術の世界と人間の世界の二声性は有機的である。」と述べているんですね。
仮面って、本体を隠すものだと思うんですよ。だからこれは、芸術の裏側、本質には人間そのものが存在しているということではないでしょうか。人間の良い面も悪い面も、芸術という仮面を被って表現しているとも言えます。
こちらの風刺画繋がりで、もう一つ紹介したい絵があります。

こちらの絵は、ゴヤが描いた風刺画で、貴族社会における結婚の欺瞞性を風刺したものとされています。
こちらの画面左で両手を合わせる老婆が、ゴヤがしばしば登場させるスペインの古典的小説「カリストとメリベーアの悲喜劇」の売春斡旋セレスティーナだとすると、この結婚が一種の売春であることが暴露されているとも言えます。
ここにも仮面を被った花嫁が登場し、不気味さを演出していますね。
彼女はこの悲劇の結婚の被害者というわけではなく、彼女には彼女なりの目論見があることがこの仮面から窺い知れます。
そして次に、《座っている少女》の絵について。
今回のパウル・クレー展は、お写真OKの絵とそうでない絵があり、《座っている少女》のお写真はないのですが、こちらの絵は、まだらに置かれた色彩の上に形を捉えるという手法を取っていて、通常の絵の描き方の真逆で面白い絵なんですね。
また、クレーは、キュビズムやシュルレアリスムなど色々な流派から影響は受けるんですが、作風は完全オリジナルなんですって。どこにも属さないのがクレースタイル。
クレーはマッケからも影響を受けるんですけど、マッケは色彩がとても綺麗な絵を描くんですね。当時のドイツの画家は色彩を象徴的に扱うんですけど、マッケは色彩は色彩として一番映える配色で描くのが特徴みたいです。
また、クレーの「絵は結局画家の主観」というのが印象的でした。
結局何を描いてもそれは画家の主観。なんでその色をそこに置いたのか。→そこに置くのが一番綺麗だと思ったから。(主観)という風な感じで、結局何を描いても画家の主観だという主張がインパクトあります。
確かに結局何描いてもどう解説しても、画家の主観の域は出ないですよね。
そう言っちゃうと元も子もない。。。
そして今回のメインの絵です。
展覧会のkey visualにもなっているこちらの絵。《北方のフローラのハーモニー》

こちらの絵は学芸員さんいわく、適当に色を配色した抽象画ではなく、緻密に計算された配色とのこと。よく見ると、真ん中の白を基準に点対象に色の配色がされています。
フローラは植物相のことで、複雑な植物・生命を抽象的に捉えて描いた作品ですね。
暁は抽象画は苦手なので、あまりこの絵の良さはわかりませんが、配色はよく考えられているんだなあと。。こういう単純な構成の絵ほど色の選択が難しいだろうなと思います。
そして次のこちらの絵。

これも暗から明へと段階的に配色されていますね。こちらは天を仰ぎ見ながら上昇していこうとする、女性に擬人化された蛾の姿を重ねているもので、「この矢印はなんだろう?」と思っていたら、こちらの矢印は重力を示しているみたいです。天に登ろうとする女性とは裏腹に、重力が現実味を帯びさせますね。このうっすら白みの色で表現される十字架は死を暗示しているという怖い絵です。
もう一つ、怖い絵がこちら。

こちらの絵、《花のテラス》なんてかわいい名前がついていて、暁もてっきりお花が描かれているかわいい絵なんだと思っていましたが、学芸員さんの解説は違いました。
皆様、アダムとイブの楽園追放のお話しは知っていますか?
「アダムとイブは苦しみも心配もなくエデンの園に住んでいたが,蛇の誘惑に負けて知恵の木の実を食べた。 神の命にそむくこの行為(原罪)のため2人は楽園を追われ,それ以来人間は苦労して働き,ついには死する運命となった。」というお話です。
この絵は、その楽園追放後の、蛇しかいない楽園を描いたものです。
まるでナチスドイツによって、芸術から追放されたクレーを表すかの如くです。
こちらは恐ろしい蛇を抽象的に表現しているというわけですね。
なんとも恐ろしい絵。。。
とまあ、他にも色々と解説いただいたのですが、暁の印象に残っているのはここまでです。
今回の展示会は、その当時のパウル・クレーが影響を受けた色々な作家さんの絵が展示されていて、パウル・クレー以外の絵が本当に多かったです。
その当時のパウル・クレーの立ち位置を相対的に見るために飾られているとのことですが、暁の好きなデ・キリコのシュルレアリスムの絵も飾られておりました。
そして今回、5/18は国際博物館の日ということで、コレクション展が無料観覧できました。
そのため、ついでのコレクション展にも。。。
暁の一番好きだった絵がこちら。
丸投三代吉さんの《春夏秋冬》です。
動物が至る所に散りばめられたこちらの絵はとても大きく、存在感のある絵でした。
2Fに展示されています。
ぜひこちらの絵を見て帰っていただきたいです。
そしてこちらの絵。

こちらタイトルはどういう意味なんでしょうか。
暁の苦手な抽象画ですね。
色彩と幾何学模様がなんとなく好きです。。
画面右側に不自然についたオレンジ色の○はなんでしょうか。
疑問の多い絵です。
そしてさらに疑問の多い絵たちが1Fにはたくさんありました。
こういう絵の良さがあまりわからず。。。
なんなんでしょう。アートって不思議ですよね。
タイトルなんて、《黒地に赤い円》とそのままのタイトル。。。
暁は甚だ疑問であります。。。
と、まあ今回のパウル・クレー展のおまけでした。
皆様、パウル・クレーについて少しはわかりましたか?
パウル・クレー展閉幕まで、あと1週間。
ぜひ会場に足を運んでみたはいかがでしょうか?
展覧会名:パウル・クレー 創造をめぐる星座
会期:2025/3/29(土)~2025/5/25(日)
時間:10:00~18:00
場所:兵庫県立美術館
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